新型コロナウイルスの影響で、今年4月の訪日外国人観光客が前の年に比べ99.9%減ったというニュースがありましたが、その影響が直撃したお仕事「全国通訳案内士」の現状とは?6月9日(火)TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村ディレクターが取材報告しました。
★稼ぎ時の「桜の季節」とコロナが重なる…
「全国通訳案内士」とは国家資格で、インバウンドの観光客に対し通訳をしながら日本の観光地を案内する職業なのですが、コロナ禍でどれ位の影響が出ているのか。全日本通訳案内士連盟理事長・松本美江さんに聞きました。
- 全日本通訳案内士連盟・理事長・松本美江さん
- 「なかなか年間通してまんべんなくお仕事があるわけではなく、一番多いのは桜の季節。3月4月に30~50%の年収を稼ぐという方がとても多い。こういう状況になったので私どもの団体ではアンケートを取りまして、3月の場合、昨年に比べて日数で71%減。4月に関してはほとんどゼロに近く。私個人も3月4月は2か月間でマイナスになりました。」
海外に日本をPRするポスターには桜が載っていることも多く、やはり初めて日本に来る外国人の方は桜を見たい。ですが今年はその頃にちょうど世界的な出入国制限も始まり旅行はほとんどキャンセル。
その後の予約についても松本さんに伺うと、秋に企業関連のツアーがわずかに残っているのみで、一般の観光客向けのツアーについては来春のものもキャンセルになってしまい、収入はほとんど見込めない状況。
持続化給付金があるとはいえ、他の業種と比べて影響が長引きそうということで、松本さん達は、政府に対して追加の支援を要請する意向だそうです。
★「インバウンドのリスク」に予め備えるべきだった
ただ、業界内ではもっと前からこういった事態を予測して対策ができなかったのか?という意見もあります。全国通訳案内士の豊嶋操さんのお話です。
- 全国通訳案内士・豊嶋操さん
- 「この問題が起きる前は、来るだけ来て、こっちもそれに対応するだけ対応するっていう、もし来なくなったらどうなるかっていう視点は全然無かったなっていうのが私の個人的な印象で、逆に私は、人が浅草あたりでぎゅうぎゅうに混めば混むほど、これ全部いなくなった時どうするんだろうってずっと心配というか。友人と今は好調だけどどうすんだろうねっていう話は飲み会ベースで時々してましたけど、答えは出なかったですね。みんな正直やっぱりそんなには心配していないという感じですね。でも観光立国を目指すにしても、基本的には災害オンパレードの国ですから、それはもうセットで考えないとだめなんじゃないかなと。」
全国通訳案内士の皆さんは補償はや支援も求めていますが、一方で、自らを反省する視点もありました。
全日本通訳案内士連盟の松本さんも「インバウンドは平和産業」と仰っていて、2011年の東日本大震災の時もインバウンドが大幅に減少したけれど、この時は被害が日本だけということもあり、その年の秋には観光客数が回復。そして忘れたころにこういう事態になり、なかなかリスクへの備えが整っていないということを指摘しています。
★「オンラインで観光」など、今できることを
災害大国日本では今後もこういった事態は起こりうるという中、インバウンドのリスクに備えて今、何ができるのか。全国通訳案内士・豊嶋操さんはこのようにおっしゃっています。
- 全国通訳案内士・豊嶋操さん
- 「来れなかった間、つまり今なんですけれども、その時にも日本を楽しんでもらえるアイデアが必要なんじゃないかなと思います。それは今後再び日本に来ていただく、訪日意欲を高めるということにもつながると思うんですけど、例えばオンラインで、画面の先に舞妓さんがいて、踊りを見せてもらうというのは普通のただの映像でもあるんですけど、その舞妓さんと会話することはできると思うんですよね。舞妓さんの隣に通訳ガイドがいれば。双方向のコミュニケーションが成り立てば、雰囲気は、臨場感は伝わると思いますし、そういうのはやってみたいなと私自身、今思います。一つのアイデアとして。」
コロナ禍を機に、ビデオ会議のツールが浸透してきましたけれど、そういったものを活用して海外と日本をネットでつなぎ、通訳案内士さんが間に入りながら双方向で会話をして日本の文化を楽しんでもらう。そして、事態が落ち着いたときには実際に日本に来て体験してもらうということができるのではないか、ということです。
他にも豊嶋さんはインバウンドの受け入れが本格的に再開した際に備えて、どのように安全性を担保して旅をしてもらえるか、海外の旅行会社との打ち合わせを行っているそうです。
新型コロナウイルスの影響はまだまだ長引きますから、この機会にインバウンドのあり方について考えなければいけませんね。