東日本大震災から9年が経ちました。この9年の間にも各地で地震、台風、水害など、様々な災害が起きていますが、その度に多くのボランティアが災害現場で活躍しています。ということで、きょうはボランティアの新しい動きについて、3月11日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは今年1月から始まった、「スケット」という新しいインターネットのサービスについて。一般社団法人FUKKO DESIGNの理事、木村充慶さんのお話。
★SNSで助っ人探しができる「スケット」
- 一般社団法人FUKKO DESIGNの理事 木村充慶さん
- 「被災した方と、支援したい方が繋がるようなマッチングサービス。被災した現場の写真と、現状と、どういうことをして欲しいかを「スケット」の専用サイトに発信する。例えば、家の土砂を取り除いて欲しい、床上浸水で瓦礫を撤去して欲しいなど要望を書き込む。そして、自分でもできそうと思ったら、応募ボタンで応募できる。SNSと連携しているので、信頼感やボランティアの経験値が、ある程度見えてくるので、自分が納得した人とやり取りができる。」
SNSで助っ人探しができる、「スケット」というサービス。まず災害が起きた時、助けを求めたい人は、スケットの専用サイトで、何をして欲しいか、写真付きで書き込みます(雨漏り修理、土砂かき等)。するとこの情報が本人のツイッター等を通して拡散され、支援したい人から連絡が来るのを待ちます。そしてお互いの条件が合致すれば、マッチング成立。直接連絡を取り合い実際にボランティアが行われるという流れ。
ただ、通常、このマッチングの役割を果たすのは、地域に臨時で立ち上がる災害ボランティアセンター(VC)なんですが、運営しているのは普段福祉関連の業務を担当している社会福祉協議会。その為、VCの立ち上げに時間がかかり、ボランティアが来てくれないことも多いそうなんです。木村さんご自身もライフワークとして各地でボランティア活動を続けてきたそうですが、そういった課題を直に感じていたため、今回、そのVCを補う仕組みとして「スケット」を完成させということでした。
★ITのお困りごとはプロが解決します
そして、VC自体を支援する動きも出てきています。IT企業のサイボウズ株式会社が始めた、「災害支援プログラム」と銘打たれた取り組みについて。担当の柴田哲史さんにお聞きしました。
- サイボウズ株式会社 柴田哲史さん
- 「受け入れる側の、災害ボランティアセンター(VC)の支援。まず最初に作るのが、ボラセンのホームページやフェイスブック。あとは、ボランティアの登録の仕組みを作ったり、何日に何人位のボランティアが来るかなどのサポートも行う。災害時は、何人来るのか分からないので、受付はパニック状態でクレームの嵐なので、その辺を事前に「見える化」するのが特徴。一応、現地に担当者もいるが、基本的にITは得意ではないので、僕らがツールでサポートして、その人たちがやるべきことに時間を作ってあげることが大事。」
VCのスムーズな運営には、ホームページの役割が非常に重要になってくるそうです。なぜなら、VCが立ち上がると問い合わせの電話が殺到し、職員は電話対応だけで忙殺されることも多いとか。よって、新たに開設するホームページには「よくある質問集」のページを作り、受付の場所、駐車場の有無などを記載していくそうです。すると電話の数が激減し、本来の仕事に集中できるようになります。柴田さんはこうした活動をこれまで一人で行なってきたそうですが、今年1月、ついに社内の有志30名超が集結し、今後は会社ぐるみで活動を行なっていくとお話ししていました。
★ITツールの無償レンタル
さらに、今度は会社の枠を超えて、IT業界の有志 数100名で構成されるボランティア団体も、やはりVCへの支援を行なっているようです。一般社団法人 情報支援レスキュー隊の代表理事、岸原孝昌さんのお話。
- 一般社団法人 情報支援レスキュー隊・代表理事 岸原孝昌さん
- 「我々の活動は、実際に災害が起きた時に、ボランティア団体や社会福祉協議会(社協)さんの活動を、ITを使って支援をしている。現地で必要な、パソコン、プリンター、モバイルルーター、スマホを、被災地のボランティア団体に貸出を行っている。基本的には無償。モバイルルーターやスマホは、通信事業者から貸出を受けて、それを提供している。」
一般社団法人 情報支援レスキュー隊は、ITのプロフェッショナルたちが、被災地の支援を行う目的で5年前に立ち上がったボランティア団体です。3ヶ月を目安として、ボランティア団体を対象に無償で機材を貸し出しし、実際に現地に担当者が入り、パソコンの初期設定を行っていくこともあるそうです(資金は会員費や寄付で賄う)。
★行政も被災者に。ボランティアの支援は必要不可欠
このように「ボランティアを、ボランティアが支援する動き」が広がっていますが、ボランティアありきの現状について、本当にこれで良いのか?疑問に思ったので、最後にボランティアのマッチングサービス「スケット」を開発した木村さんに聞いてみました。
- 一般社団法人FUKKO DESIGNの理事 木村充慶さん
- 「社会福祉協議会は、災害ボランティアセンターを立ち上げるが、彼らは災害災害支援のプロではないので、そこはしょうがないと思っている。ただ、専門的なスキルを蓄えづらい構造になっている。自治体の職員は、3年に1回は異動するので、どうしても専門的なスキルが身に付きづらい。だけど、災害支援は経験や訓練、知識が物を言うので、そういう意味ではやはり、ある程度ボランティアも必要なんじゃないかなと僕は思ってます。」
いつ起こるかわからない大災害…。行政や自治体自体も被災者となりうる中で、ボランティアには今後も変わらず、大きな役割が期待されています。また、そのボランティア活動を円滑にするためにも、ITの分野からの支援も加速して行きそうです。