きょうは、楽器の寄付ができるふるさと納税「楽器寄付ふるさと納税」について、2月3日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
ふるさと納税というと、「お金を寄付して返礼品を受け取る」というのが一般的ですが、お金ではなく“物納”で若者を応援するという動きが、全国的に広がりを見せています。この取り組みは、三重県いなべ市が全国に先駆けて始めています。いなべ市役所・政策課の佐藤祐孝さんにお話を伺いました。
★吹奏楽部に楽器を寄付「楽器寄付ふるさと納税」
- いなべ市役所・政策課 佐藤祐孝さん
- 「市内の吹奏楽部に、家庭で使わなくなった楽器を寄付して頂く流れになっている。ふるさと納税の制度を活用していて、寄付した人も控除を受けられる仕組み。返礼品という形は取っておらず、寄付してもらったら、証明書と中学生や高校生からお礼の手紙、演奏会の招待状を送っているのが返礼品に近いのかなと思っています。」
楽器を寄付したい人は、まずネット上にある専用ウェブサイト「楽器寄付ふるさと納税」にアクセスします。そして、寄付したい楽器の型番や、名前・住所などの必要事項を登録すると、その楽器がまだ動くかどうか、使えるかどうかの査定が行われます。利用可能と判断された場合は、無事、査定額が決まり、楽器を希望する中学校や高校に送られりという流れです(楽器の査定額が、税金の控除の対象となる)。
いなべ市では 2018年10月からこの取り組みをスタートさせ、この1年で256件の申し出があり、査定を経て故障品を除いた119件が実際に寄付されているそうです。
★楽器の劣化で音が出ない!
他の自治体にも広がりを見せるこの「楽器寄付ふるさと納税」、各地の自治体が導入を進めるのには、中学校などの吹奏楽部が抱える課題が背景にあるようなんです。再び佐藤さんのお話。
- いなべ市役所・政策課 佐藤祐孝さん
- 「市内の校長先生から楽器を買ってほしいと依頼があったが、全ての生徒が使う物であれば行政として予算をつけて購入できる。でも、なかなか楽器を買うお金を計上できなかった。実際に相談を受けて調べたところ、昭和50年代に購入した楽器がほとんどで、傷みが激しく出したい音が出ずに、演奏できる楽曲が限られてしまい、新曲に挑戦できないといった問題があった。」
公立の学校の吹奏楽部は慢性的な楽器不足となっているようなんですが、サッカー部のボールや、野球部のバットのように、担当楽器が分かれている為、1つの楽器を皆で使い回すわけにはいきません。さらに楽器自体は高額なものも多く、吹奏楽部だけ高額な予算を付けることも出来ない…。この問題はいなべ市に限ったことではなく、現在いなべ市以外にも、5つの市や町が「楽器寄付ふるさと納税」を導入しています。
★1000字を超えるメッセージも
寄付する人は、「どの自治体のどの学校に楽器を贈りたいか」というところまで選べるそうですが、関東で唯一、埼玉県にある北本市が去年7月から制度の導入を始めています。導入から半年余りで楽器は届いているのか?北本市・市長政策課の林博司さんに伺いました。
- 北本市・市長政策課 林博司さん
- 「今は20個ぐらいの楽器が実際に届いていて、各中学校に振り分けている。通常のふるさと納税だと寄付者の応援メッセージは付いていないが、楽器寄付に関しては『自分が使ってたけど今は使わないので、中学生に使ってもらえると嬉しい』などのコメントが結構な頻度で来るんです。こちらも嬉しいし、それを中学生にも伝えている。寄付者の思いが伝わる。」
思い入れのある楽器を寄付するということで、1000文字を超える長文のメッセージが届くこともあるとか。
★寄付してくれた方向けの演奏会も予定
そんな中、実際にクラリネット3本や、アルトサックスの寄付を受けたという中学校の生徒さんにも話を聞くことができました。北本中学校・吹奏楽部の、3人の生徒さんです。
- 垣内美玖さん(1年生・クラリネット担当)
- 「ビックリと嬉しさの両方があった。この取り組みはあまり知られてないからHPにきたっていうのがあったが、本当に来るのかなって思ってました。」
- 増田敬太くん(2年生・クラリネット担当)
- 「学校の楽器は劣化が激しいので、上手く音が出せなかったり修理に出す回数も多かったが、それも減って今までよりも練習に取り組めるようになった。」
- 伊藤綺彩さん(2年生・クラリネット担当)
- 「何本も寄付してもらって凄い嬉しかった。寄付して頂いた人に、演奏会などで、寄付してもらった楽器を使って音を届くよう吹きたい。」
3人とも嬉しそうに話してくれて、取材中、増田君にもクラリネットで1曲披露してもらいました。「楽器寄付ふるさと納税」は、あさって2月5日(水)から開催される『地方創生エキスポ』に出展し、いなべ市の職員自らPRしていくとのこと。この制度の導入をすでに決めている自治体は3件、検討している自治体も約20件あるということで、今後さらに広がっていきそうです。