日本の農業の救世主として期待のかかる「農業ロボット」について、1月20日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
国内の農家さんは、高齢化や後継者不足、人手不足に悩んでいる所が多く、問題解決の糸口として、農業ロボットの開発や導入が進められています。そうした中、埼玉県越谷市の農業技術センターと、未来型農業の開発ベンチャーの銀座農園が、共同で農業ロボットに関する研究と実験を進めていました。どんな農業ロボットなのか?開発した、銀座農園・代表の飯村一樹さんに伺いました。
★イチゴの収穫予測ができるロボット
- 銀座農園・代表 飯村一樹さん
- 「越谷市で進めているのは、イチゴの収穫量を分析して、将来の収穫予測を行う研究。ロボットには特殊なカメラが付いていて、その映像をロボットが判断しながら農場を動き回り、イチゴの数を数えたり、病気を見つけたり、イチゴや葉っぱの色を見ながら将来どれくらいとれるかを予測するロボットとなっている。」
共同研究で開発が進められているのは、「FARBOT(ファーボット)」という愛称の、AIを搭載したロボットです。イチゴが栽培されるビニールハウスを自動走行し、現在収穫可能なイチゴの数や、「あと何日で収穫できそうだ」という細かな予測を行うだけでなく、温室内の湿度や温度、二酸化炭素濃度も計測できる機能もついています。
★イチゴ狩りで「イチゴが無い!」を解消
昨年12月から、越谷市にある農業技術センターのハウス内で実験が行われ、将来的には農業技術センターに隣接する「越谷いちごタウン」での実用化を目指しているそうです。なぜ観光農園で必要とされているのか、飯村さんに聞いてみました。
- 銀座農園・代表 飯村一樹さん
- 「越谷市の観光いちご園では、今までは農場長が大体の数を把握して、明日はこれ位の数だからお客様を入れよう、みたいな予測で経営していた。でもそれだと、お客を入れたけど全然収穫が出来ないといった苦情があったと聞いた。ただ、人間がイチゴの数を数えると時間も労力も掛かる。それをロボットにやってもらう。これまでの経験と勘を、データ化するのが目的。」
観光農園である越谷いちごタウンには、毎年多くの人がイチゴ狩りに訪れるそうなんですが、多くのイチゴ農園は、生産者の経験や勘を頼りに、収穫予測を行なっているそうなんです。なので読みが外れると大変。少なめに見積もってしまうと「イチゴが足りない!」と苦情が。逆に多めに見積もると、イチゴが余ってしまっていました。この需要と供給のズレを解消するためにも、ファーボットを使った研究が進められていました。
★アスパラガスを刈り取るロボット
一方で、佐賀県にあるアスパラガス農家では、別の形の農業ロボットが稼働を始めていました。開発をした農業用ロボットベンチャー、inaho(イナホ)株式会社の三浦良真さんにお話を伺いました。
- inaho株式会社 三浦良真さん
- 「開発した野菜の収穫ロボットは、人が今まで目で見て収穫時期を判別していたのを、ロボットが判別して、ロボットが実際に野菜を掴んで取るというもの。キャタピラの付いた小さい車の台座に、ロボットの目と、人間でいう腕(アーム)がついていて、ロボットが採れるなと判断したら、アームがアスパラを掴んで籠に入れる動作をする。」
こちらは、ビニールハウスで育てられる野菜の自動収穫ロボット。アスパラガスは土の中からニョキっと生えているんですが、食べ頃のアスパラガスを判別して(長さを設定)、クレーン車に付いているようなアームが自動で刈り取ります。
★アスパラガス農家「膝が壊れるか、腰が壊れるか…」
現在は佐賀県太良町(たらちょう)にあるアスパラガス農家一軒で実用化されているこのロボット。実際に導入している農家の方に、ロボットの性能を含め感想を伺ってみました。太良町でご家族でアスパラ農家を営む「A‐noker(エーノーカー)」の安東美由紀さんのお話。
- アスパラガス農家「A‐noker」安東美由紀さん
- 「毎日収穫すると、ずっと中腰で一日何時間もかかるが、ロボットが基本的に収穫するので、1棟30分かかっていたものが、5分位で的る。余った時間を、品質の改良など人間でしか出来ない事に充てられる。極端に言うと、人を雇うと単純作業でゴメン!と思うが、ロボットは文句も言わずにやってくれる。単純作業はもっとロボットに持って行って欲しいです。」
佐賀県でのアスパラガスの収穫期は2〜10月と長く、夏場は朝・夕の2回、収穫しなければならず、日々の収穫作業は重労働。これをロボットが取って代わることで、農家さんの負担軽減や、人手不足への対応に役に立っているようです。
★トマト、キュウリ、雑草…全部自動で!
最後に、ロボットを開発したイナホの三浦さんは、「今後も日本の農業にロボットが活躍するのでは」とこんな思いを聞かせてくれました。
- inaho株式会社 三浦良真さん
- 「今できるのはアスパラガスだけだが、将来的にはトマトやイチゴ、キュウリとかで出来るようになりたいと開発を進めている。チャンスがあれば雑草も取りたい。ただ雑草は、色々な会社から製品が出ているので、どこか一つの会社が全部やるのではなく、各社得意分野で色々なサービスを投入していけると、農業が元気になる。」
今後、益々各地で農業ロボットの導入が進んでいきそうです。